雪白の月
act 2
外警管理室につくと、西脇が待っていた。
「来ると思って、警備の記録を回してもらっています。 こちらへ。」
「有り難う。…西脇まで『無茶するな』って言うなよ…」
「言いませんよ。言っても無駄ですから。」
しれっとこんなことを言うのが西脇という男だ。
西脇の言葉に些か困ったように笑うのが岩瀬で…言われた本人は 「解ってるじゃないか。」 そう言って微笑む。
そして―
「記録の解析を頼む。半分はこちらで。残りはコンピュ―ター班へ。」
「はい。」
西脇はそう答えながら「こちらです。」と管理室の中央モニター前を指す。
石川はそこに座ると凄い速さで解析を始めた…
+ + +
解析を始めて随分経ったころ―
岩瀬が石川に温かいコーヒーを差し入れた。
「隊長。少し休憩を取りませんか?」
差し出されたコーヒーを受け取りつつ石川は
「有り難う。 …そうだな、少し休むか…」
そんな会話をしていると―
―ピッ―
「石川だ。」
「隊長!池上です。Wゲート付近で不審物発見しました。今、中を確認中です。」
「解った。 池上、確認作業は中断しろ。今、爆班を向かわせる。それまでは触らないように。」
「了解。」
そう言って無線が切れる。と、ほぼ同時に爆発音が聞こえた―
「池上!! 応答しろ!!」
「誰か近くのものに連絡を!」
「あ!隊長!! 危険です!行かないで下さい!!」
石川と岩瀬はそんな言葉を背中で聞いていた…2人は爆発音と同時に駆け出していたのであった。
岩瀬は目の前を駆けてゆく石川の背中を見つめ…
「…悠さん…」
「隊長だ。」
「…隊長 今Wゲートに向かうのは危険です。」
「そんなの解っている。」
「…官邸のテロ予告と同一犯でしょうか?」
「さぁ… だが、タイミングがよすぎる。可能性は高いな。」
「何があっても守ります。だから…」
「あぁ。それも解っている。頼むぞ 岩瀬…」
そう言って石川は後ろをチラリと見る。そして微笑んだ。
「何があっても、お前がいるから…。だから…」
「そうですね。」
そう言って岩瀬も微笑む。
「任せたぞ。」
「はい。」
―ピッ―
「石川だ。」
「西脇です。池上達は無事でした。」
石川は隊員たちが無事だという事にホッとしつつ…
「そうか…。解析は?」
「結果が出ました。池上が発見した不審物を置いた人物がWゲートからSゲートの方向へ向かったようです。今、何処ですか?」
「…WゲートとSゲートの間だ…」
「隊長!!今すぐ館内へ戻ってください!!」
「隊長!伏せて!!」
西脇の声と岩瀬の声が同時にする。
そして爆発音も…
「隊長!! 岩瀬!!」
西脇の声だけが無線から響いている…
そう 石川と岩瀬は爆発に巻き込まれたのだった―
>>act 3